BBBの機能的特徴 ー密着結合とP糖タンパク質ー

2月になってしまいましたね〜。まだまだ寒くインフルエンザが猛威を振るっていますが、その傍らゾフルーザな話題で創薬クラスタは熱くなっていますね。

話は変わりますが、次の論文がTwitterで話題になっていました。

参考 Blood-brain barrier breakdown is an early biomarker of human cognitive dysfunctionNature Medicine

Twitter上で盛り上がっていたのは以下の観点。

  • ヒトの認知力低下 (アルツハイマー病) の原因はBBBの破綻が原因では?
  • これまでの定説とされてきたアミロイドβやタウタンパク質の蓄積は結果であって、原因ではない?
  • アルツハイマー病治療薬の臨床試験の成功率は極めて低いが、BBBの破綻に着目した探索研究が期待される?

 

血液脳関門 (BBB) が病態時に破綻していることはよく研究されてきていますが、私自身不勉強な分野でこれから勉強していこうと思います (もちろん当ブログでも記事としたいです)。

そんなBBBについては一度取り上げましたが、過去記事では不十分でしたので本日はBBBの機能について過去記事を少し補足します。

脳は大切に守られている

BBBの機能的特徴

過去記事でも紹介した通りBBBの存在によって低分子医薬品の98%以上、抗体や核酸などの全ての高分子医薬品の脳内への移行が制限されています。

脳内へ物質が移行することを “分布” と呼びますが、脳内への分布過程において、BBBが制御している因子は何でしょうか?

それは細胞膜の通りやすさ “膜透過性” です。

薬物の組織分布
投与部位から循環血液中に移行した薬物は、全身を駆け巡り、各組織 (臓器) に移行する。この血液から各組織への薬物移行を “分布” と呼ぶ。薬物が薬効を示すには、標的組織に運搬される必要がある。分布過程に影響を与える因子としては、化合物の脂溶性や膜透過性、結晶中タンパク質との結合率、血流速度などが挙げられる。

物質の膜透過性を規定する2つの経路があります。

  1. 細胞間の隙間を通る細胞間隙輸送経路 (Paracellular Route)
  2. 細胞内を通過する経細胞輸送経路 (Transcellular Route)

BBBの障壁たる所以は、この2つの経路を両方ともブロックしているためです。

①密着結合:細胞間隙輸送をブロックする

過去記事でも紹介しましたが、BBBを構成している血管内皮細胞 (ECs: Endothelial Cells) が互いに結合することで形成されるのが密着結合 (TJs: Tight Junctions) です。

TJsはECsに発現するタンパク質が相互作用することで形成され、分子の濃度勾配に従った細胞間隙輸送を制限しています。TJ形成タンパク質としてClaudinOccludinが重要であり、TJの強さを表す膜抵抗値 (TEER: Trans-endothelial Electrial Resistance)分子のサイズ選択性を決定している。

参考 上皮バリアと血液脳関門J-STAGE

また、ClaudinやOccludinとは異なるTJs形成タンパク質 (Tricellulin, Angulin) を標的としたDDS等も研究されており、昨年以下のような発表がされています。

参考 血液脳関門を通過してアンチセンス核酸を中枢神経系に送達する新技術の開発東京医科歯科大学プレスリリース

ミソ先生

TJ形成タンパク質を欠損した動物は致死性のものが多く、重要度が伺えるじゃろ

②トランスポーター:経細胞輸送をブロックする

細胞間隙輸送を制限しているTJsに加え、低分子化合物の脳内移行の障壁としてABC (ATP-binding Cassette) トランスポーターの存在が知られている。BBBを一度通過した分子をATPを駆動力に脳外へと汲み出してしまいます。こうして生体異物から中枢神経系を保護しているのです。

ABCトランスポーターの中でもP糖タンパク質 (P-gp: P-glycoprotein) はBBBにおける発現量が非常に高く、イオンからポリペプチドまで様々な分子を認識する幅広い基質認識性を有しているため、最も重要な働きをしていると考えられている。

P-gpの他にも、BCRP (Breast Cancer Resistance Protein) やMRP4 (Multidrug Resistance-associated Protein 4) などのトランスポーターも中枢神経系保護に寄与していることが遺伝子欠損動物を用いた試験にて確認されている。

引用
qPCR Analysis of Rat BBB Transporters. Roberts LM. et al., Neuroscience 155: 423-438 (2008)

ホネくん

血管内皮細胞にだけ発現が高いのがミソですね??
発現量には種差もあるから要注意じゃよ。これはラットの結果。

ミソ先生

まとめ

  • 医薬品の脳への分布過程において、BBBが制御している因子は “膜透過性”
  • 細胞間を通る細胞間隙輸送はBBB第一の機能 “密着結合” がブロック
  • 細胞内を通過する経細胞輸送はBBB第二の機能 “トランスポーター” がブロック

血液脳関門は2つのメカニズムで脳を守っている

 

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