脳を守るもう一つの関門組織 ー血液脳脊髄液関門ー

3連休ですね。いつも読んで頂きありがとうございます。

最近は細胞医薬関連のニュースが多いですが、脳DDSの観点で個人的に好きなJCRファーマ株式会社も帝人と共に臨床試験を開始したようです。適応疾患は急性期の脳梗塞。

参考 ヒト歯髄由来幹細胞「JTR-161」の臨床試験で投与を開始JCRファーマ株式会社

DDSキャリアとしても細胞は着目されているので、勉強していきたいなと思います。大規模生産・品質管理など難しい面はあるのでしょうが、成功事例が出てくれると心強いですね。

さて、前回は血液脳関門 (BBB) の機能的特徴についてまとめました。

BBBの機能的特徴 ー密着結合とP糖タンパク質ー

実は脳を守る関門はBBB以外にも存在します。脳内の動態について、だんだんと複雑な話になってきますが紹介したいと思います!

脳を守る第2・第3の関門組織

BBBによって脳は異物から守られていることを過去に紹介しました。

脳は大切に守られている

実はBBBの他にも脳にはいくつかの関門組織があります (下図参照)。

引用
Engelhardt B. et al., Nature Immunology 18: 123-131 (2017)

 

血液脳脊髄液関門 (BCSFB: Blood-Cerebrospinal Fluid Barrier)

BCSFBは脳脊髄液 (CSF: Cerebrospinal Fluid) 産生に関わる脈絡叢 (CP: Choroid Plexus) の血管とCSF間に存在する障壁であり、その実体は脈絡叢上皮細胞です (上図c)。

CPの血管はBBBと異なり有窓性 (Fenestrated) であり、間質 (Stromal) との物質のやりとりは制限されていません。しかし、CP上皮細胞apical側 (CSF側) に密着結合 (TJ:Tight Junction) を形成することで脳側への分子の移動を制限しています。

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CSFに流入した物質と脳実質 (CNS Parenchyma) の間にも脳脊髄液脳関門と呼ばれる障壁機構があります。それは上衣細胞 (Ependymal Cells) によって形成されています。

血液クモ膜関門 (BAB: Blood-Arachnoid Barrier)

BABはCSFで満たされたクモ膜下腔 (Subarachnoid Spase) とその外側に流れる上矢状静脈洞の間に存在する障壁であり、CNS中の分子の排出を制限しているとされてきました (上図a)。

これまでは能動的な排出機構は存在しないと考えられてきましたが、クモ膜下腔のCSFからCNS外へと分子を選択的に排出するトランスポーターの発現が確認される等、新たな機能について研究が進んでいます。

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中枢神経系は脳だけでなく脊髄も含まれます。そんな脊髄と循環血液の間にも関門が存在していて血液脊髄関門 (BSCB: Blood-Spinal Cord Barrier) と呼ばれます。BBBと類似した構造で、血管内皮細胞が実体です。

関門組織間の比較

これまで紹介してきた関門組織のうち、医薬品の中枢神経系内への流入を制限している血液脳関門 (BBB)血液脳脊髄液関門 (BCSFB) についてその関門機能を比較したいと思います。

注意
BABはクモ膜顆粒による循環血液への医薬品移行の寄与が大きいため、ここでは述べない。

物質透過性の違い

BBBと比較してBCSFBはTJs機能が弱いことが報告されています。

TJsの形成指標である経上皮電気抵抗値 (TEER: Trans-epithelial Electrical Resistance) を比較するとBBBを構成する脳血管内皮細胞膜においては1500 Ωcm^2であるのに対し、第四脳室脈絡叢上皮細胞膜では150 Ωcm^2と低値を示します。

TEERについては下記リンクを参照ください。

参考 TEERの測定原理株式会社セルシード

密着結合 (TJs) の違い

このような透過性の違いの一つは関門組織間のTJs関連タンパク質の発現量の違いが要因として考えらます。

Claudinsの発現パターンが大きく異なることが確認されており、BBBにはClaudin-3, 5, 12がBCSFBにはClaudin-1,2,3,11が発現しています。特にBBBではClaudin-5が最も高く発現しておりTJ形成に非常に重要な役割を果たしていますが、BCSFBではBBBにはほとんど発現していないClaudin-1の割合が多く、その違いが透過性の大小に寄与しているのではないかと考えられています。

引用
Tietz S. and Engelhardt B., J. Cell Biol. 209: 493-506 (2015)

トランスポーターの違い

透過性の違いの要因としてはBBBの機能の一翼を担うP糖タンパク質 (P-gp) の発現量や発現部位が異なることが挙げられます。

P-gpはBBBにおいては血管側に発現している一方で、BCSFBではCSF側に発現しています。つまりBBBでは脳外へと薬剤を排出する役割をしていたのに対し、BCSFBでは脳内に薬剤を取り込む方向に機能しているというわけです。

しかしBCSFBのP-gp発現量はBBBの0.5%以下であり、BCSFBにおけるP-gpのCNS内恒常性維持への寄与は一般的には無視できる等と考えられています。この事実、何かしらの意味がありそうですよね??とても興味深い部分です。

引用
Chan GNY. et al., Trends Pharmacol. Sci. 34: 361-72 (2013)

ホネくん

BCSFBの方が関門機能が弱いなら、脳への薬物送達に利用すれば良いのでは??
実はBCSFBの表面積はBBBの1/5000程度しかないんじゃ。薬物送達効率は残念ながら悪いと言わざるを得ないんじゃよ。

ミソ先生

まとめ

  • 脳にはBBBの他にも関門組織が存在する
  • BCSFBは脳室脈絡叢の上皮細胞により形成され、循環血液からCSFへの移行を制限している
  • 関門機能の違いは密着結合の強さやトランスポーターの発現の違いで説明される

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