脳への薬物送達 ① ー侵襲的アプローチー

いつも見てくださりありがとうございます。週1の更新になりそうですね。

Drug Delivery System (DDS) の意義は、医薬品の主作用を最大化し、副作用を抑制することであると前回の記事で紹介しました。
Drug Delivery Systemの意義

本日は私が注目している脳へのDDS、その中でも特に “侵襲的アプローチ” について紹介したいと思います。

Memo
脳へのDDSはCNS DDSと呼称されることが多い。また、CNS DDSは侵襲性の違いによって “侵襲的手法” と “非侵襲的手法” に分類することができる。CNS: Central Nervous System

BBBをこじ開ける!? ー侵襲的アプローチー

以前、脳にはBBBと呼ばれる異物侵入バリアーが備わっているために医薬品が脳に到達するのが難しいことを紹介しました。

脳は大切に守られているそのBBBのバリアー機能を「一時的に喪失させたり」「脳内へ直接的に医薬品を投与してしまおう」というのがCNS DDSの “侵襲的アプローチ” です。標的組織への薬物到達量を最大化しつつ、正常組織への曝露を最低限に留めることが期待できます。歴史に沿って、3種の方法を紹介します。

  1. 局所投与
  2. Osmotic BBB Opening
  3. 超音波およびマイクロバブルを利用したBBB Opening

 

①:局所投与

文字通り直接中枢神経系局所へカテーテル等を挿入し、そこから医薬品を投与する方法です。

例えば脳腫瘍治療の選択肢として局所投与の優先度は高く、それは化学療法剤 (抗ガン剤) はBBBを通過するのが困難であり、全身性の副作用が懸念されるタイプの医薬品であるためです。

最近だと、脊髄性筋萎縮症 (SMA) 治療薬として承認されたスピンラザの投与方法がまさに局所投与 (この場合は髄腔内投与) の好例になります。

参考 スピンラザの髄腔内投与についてBiogen

しかし、局所投与した薬物の分布は受動拡散に依存するため治療有効面積は非常に小さく、 投与部位周辺数ミリメートル程度にしか拡散しない場合も稀ではありません。

このような背景から、脳局所投与における飛躍的な進歩の1つとして対流増加送達法と呼ばれる新たな手法が開発されました。

滞留増加送達法 (CED: Convection-Enhanced Delivery)
CEDは持続陽圧下にて微量注入ポンプを用いることで中に人為的にbulk flowを誘導し、注入物質の拡散を促進する方法です。従来の局所投与法と比較して薬剤をより均質に高濃度で広範囲に分布させることが可能としました (下図参照)。

 

引用
Lu CT. et al., Int. J. Nanomedicine. 9: 2241-2257 2014)
参考 Convection-enhanced delivery (CED)による悪性脳腫瘍の治療東北大学脳神経外科

CEDを含めた局所投与法は外科手術による莫大な医療費が必要であると同時に、脳組織の損傷や感染症などの合併症の原因となるため、より侵襲性の低い方法が理想的です。また、繰り返し投与が必要な薬剤とは相性は良くないですね。

ホネくん

まさに「主作用の最大化、副作用の抑え込み」ですね!
頭蓋骨を貫通させて、脳ミソに針を刺すんじゃ。できたら避けたい方法じゃよ。

ミソ先生

ホネくん

穴を開けられるのは確かに嫌ですね…。

②:Osmotic BBB Opening

局所投与の欠点を克服すべく、BBB の機能を一時的に減弱させ、薬剤の透過性を向上させるBBB Openingという概念が生まれました。

BBB Openingを引き起こすトリガーとしては、「浸透圧」を利用したOsmotic BBB Openingが一般的に知られています。マンニトールのような高浸透圧溶液を血管へ投与することで脳血管内皮細胞の収縮を引き起こし、数時間の間密着結合の機能が減弱する現象を利用します。

しかしOsmotic BBB Openingは血管や脳内の神経組織に対して病理変化を引き起こし、治療効果以上に好ましくない神経毒性が懸念されるためにより安全性の高い手法の開発が望まれている。

③:超音波およびマイクロバブルを利用したBBB Opening

侵襲的手法の中でも最新の知見として、超音波マイクロバブルによる医薬品、遺伝子、ナノ粒子のBBB突破を目的としたDDSが注目されています。

その利点として、上述した侵襲的アプローチと比較して安全性が高く、繰り返し治療も可能な点が挙げられる。さらに超音波照射部位特異的な治療が可能であるため、特異性が高く、全身性の副作用の少ない薬物送達が可能である。

マイクロバブルは 1-5 μm の気体が内封されたベシクルであり、リン脂質、タンパクまたはポリマーによって構成されています。さらに、その外殻には薬剤、イメージング剤、PEG またはターゲティング基質などの多様なアプリケーションを付加することが可能です。照射する超音波の強度や頻度に依存して、マイクロバブルは膨張や収縮 (stable cavitation)、 崩壊 (inertial cavitation)といった多様な挙動を示し、これら 2 種類のキャビテーションによる血管透過性促進作用を薬物送達に利用します。

この技術に関しては、もう少し詳しく掘り下げた記事を書いていこうと思います。

 

まとめ

  • 脳への薬物送達には「侵襲的アプローチ」と「非侵襲的アプローチ」がある
  • 侵襲的アプローチには「局所投与」「BBB Opening」がある
  • より侵襲性の低い技術が求められ「超音波とマイクロバブルを利用したBBB Opening」が期待されている

侵襲的アプローチが適応できる病気は限られ、より侵襲性が低く・脳送達効率の高い技術が求められている

次回は、非侵襲的なアプローチについて紹介したいと思います。

 

 

 

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